Dilemma
リリーと話し合った結果、ずっとトイレで話しているわけにも行かないのでどこか別の場所を探す事にした。
図書室は来る人間が多すぎるという事と静かにしなければマダムピンスのお叱りが飛んできてしまうという問題があった。
私はポッターに対してもう配慮はいらないと感じていた。あんな事があってから私の中でのポッターのランクは最低の辺りで彷徨っていた。
ポッターが思いを寄せているリリーと仲良くする姿を彼に見られたってもう怖くはない。
これ以上、ポッターに気を使うことは嫌だった、セブルスの件で私は彼に期待を抱く事は止めた。
シリウスの友人だからと言う理由で遠慮するなんて馬鹿げている。
グリフィンドールだからと言う理由でポッターを嫌っているわけではない。
むしろ私はスリザリンの人間よりもグリフィンドールの人間の方が人格的に好きだったが、ポッターは例外だ。
グリフィンドールに抱いていた私の信頼を踏みにじった罪は遅いのだ。
リリーと話している私を見たらポッターはどう思うのだろうか。私は少し反応が楽しみだった。
セブルスにした仕打ちをそのままポッターに返す事はできないから、私はこうやって些細な嫌がらせを決行する。

朝食を食べに食堂に集まってくる人間に私はスリザリンのテーブルに座ったまま目を凝らした。
見ている先はグリフィンドールのテーブル。今はリリーが居るがまだ、シリウスやポッターは来ていない。
ベーコンをフォークに突き刺し、口の中に押し込む。殆ど無意識の行動だったのでちゃんと味が分からない。とりあえず、詰め込んでおけ精神だ。
私は自分を奮い立たせていた、今からやろうとしている事はうまく立ち回らないとスリザリンでも問題視されてしまう。
「体調でも悪いのか?」
オレンジジュースの注がれたグラスを握り締めたまま考えにふけっていた私にセブルスが声を掛けた。
笑顔を作り、大丈夫だよ、と言葉を返すと彼は再び朝食へと向かい合った。
すると、ポッターとシリウス、リーマスとピーターが大広間に現れた。私は拳を握って、緊張を抑えた。
「おはよう。」
初めてこの大広間で交わすリリーとの挨拶。今まで、こんな風に堂々と人前で話した事などなかった。
私はグリフィンドールのテーブルへと手を振りながら向かった。
ポッターは私を睨み、リリーは驚きのあまり目を見開き、シリウスはぎょっとしたような表情を作っていた。
リーマスはそんな状況でも私におはよう、と声をかけ、ピーターはその後におはよう、と小さな声で呟いた。
「おはよう、。けど、どうしたの…?」
リリーは不安そうかつ不思議そうに尋ねてきた、その証拠に言葉の最後は消え入るような小さな声だ。ポッターの視線は私から外される事はない。
グリフィンドール生だけではない、スリザリンのテーブルではナルシッサやセブルスが驚きの表情を浮かべていた。
更にルシウスは興味深そうに目を細め、アンドロメダは特に関心はなさそうだったが時折ちらちらこちらを見ていた。
そしてベラトリックスは私のほうをじっと見つめていた。まるでその目線は私がブラック家の名前に傷をつけるかどうかを見極めているようだった。
「もう周りに遠慮する事は止めたの。友人と会話するぐらい誰にも阻まれたくないわ」
友人と言う単語にポッターはピクリと反応した。シリウスはその後ろでにやりと笑っていた。
ポッターの顔は苦渋と屈辱に満ちていた。彼が私のことが大嫌いだということは前から分かっていた。
そんな私とリリーが未だに仲良くしているところなど見たくなかったのだろう。私は内心小躍りしていた。
こんなポッターの表情を見れただけで今回の行動は成功である。
「じゃあ、また魔法薬学でね。」
私は早々に退散する事にした、衝撃を与えてすばやく身を引く。
相手に考える時間を与えずごたごたに巻き込まれる前に、逃げるのが得策だ。
少しリリーを利用してしまったような気がして罪悪感もあったがこれは後々私とリリーの友情において重要になるはずだ。
うまくいけば、リリーとこれから堂々と付き合えるのだから。
私はスリザリン寮のテーブルへと足早に向かった。するとつかつかとセブルスが私に歩み寄ってきた。
「お前は何がやりたいんだ」
その様子を見るに私のことを心配してくれていたようだ。しかし彼は怒っている。ここからは慎重に計画を遂行しなければいけない。
私はもとの席に座り、セブルスに説明をした。それをナルシッサやルシウス、そしてベラトリックスなども聞いていた。
彼女達がちゃんと聞いている事に安心した、もし聞いていなかったら困る。けれど、私は彼女達がこの出来事に興味を持つという予想をしていた。
人一倍、強い純血思想に捕らわれている彼女達が、同じ血族である私がマグル出身者と仲良くしているという事実を見逃すはずがないからだ。
「セブルス、ずっとポッターに嫌がらせされていたでしょう?
だからポッターが嫌がることをこっちもしてあげようと思ったのよ」
つまり、リリーと仲良くする姿を見せ付ける事で彼に苦痛を与える。先ほどの行為のもう半分の理由は伏せておいた。
ここで純粋な私とリリーの友情を明かしてしまうと、必要のない反発まで招いてしまう恐れがあるからだ。
あくまで私はリリーを利用しているのだ、という姿勢をスリザリンではとらなくてはいけない。
グリフィンドール生に対する嫌がらせ、報復活動だと銘打ってしまえば私とリリーの関係はスリザリンでも公認となる。
スリザリンで勘違いされたままでも、私は良かった。私の気持ちは誰より私が知っているからだ。
「は友人思いなのね」
ナルシッサは私の頭を撫でながら、ルシウスにちらりと視線をやっていた。
私も同じようにルシウスを見てみると彼も大体私の話を信じてくれたようで特に何も言ってこなかった。
ベラトリックスはまだ判断しかねていたが、この件は保留するように見えた。これでいい、すべて成功だ。
私は晴れてリリーと公衆の面前で会う事ができるようになった。
ただリリーにはどうやってスリザリン生を納得させたのかを言う事はできなかった。
本意でないとはいえ、友情を利用しているなどと言う説明を彼女が好む分けないと思ったからだ。
こういうときに私はやっぱりスリザリンなのだと思い知る。真正面からぶつかる事ができないから回りくどい方法をとらなければならなくなる。
シリウスだったらこんな時どうするのだろう、正々堂々とスリザリンに宣言するのだろうか。
そんな光景がありありと目に浮かんで私は苦笑した、これが私とシリウスの決定的違いだったのだ。
二人を別つ物が明確になった瞬間だった。